モンスターたちがとにかく殴り合って叩きつけ合う「B級モンスター映画の最高峰」である『キングコング :髑髏島の巨神』の解説・考察をしていく。
1.作品概要
監督:ジョーダン・ヴォート・ロバーツ
脚本:ダン・ギルロイ、マックス・ボレンスタイン、デレク・コノリー
製作:トーマス・タル、ジョン・ジャシュー、アレックス・ガルシア、メアリー・ペアレント
製作国:アメリカ
配給:ワーナー・ブラザーズ
時間:118分
公開:2017年3月25日
出演:トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、ジョン・グッドマン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・C・ライリーほか
2.あらすじ
話の中だけの存在とされてきた髑髏島が実在することが判明し、未知の生物の探索を目的とする調査遠征隊が派遣される。島内に足を踏み入れた隊員たちは、あちこちに散らばる骸骨や、岩壁に残された巨大な手跡を発見する。やがて彼らの前に、神なる存在である巨大なコングが出現。隊員たちは為す術もなく、凶暴な巨大生物から逃げ惑うが……。(映画.comより引用)
3.主な受賞・選出
- 第90回アカデミー賞 視覚効果賞 〈ノミネート〉
4.作品の見どころ・考察
”神々”の戦い
本作ではコングを始めとした様々なモンスターが登場するが、そのほとんどが人間の攻撃を寄せ付けず、立ち入るスキすら与えてくれない。監督が「神話の創出を目指した」と語っているように、それらはまるで神々の戦いのようだ。
最新のCGを駆使した映像で神々の戦いが目の前で繰り広げられるだけでなく、大きな山場が劇中に何度もあるため、ハイテンションを保ったままクライマックスへと進んでいく展開は王道モンスター映画といったところだ。
モンスター映画×ベトナム戦争
1973年、アメリカがベトナムからの撤退を発表した日が本作の時代設定となっており、モンスター映画としては珍しいベトナム戦争を取り入れた作品となっている。
現在ではとんでも科学のオカルトに分類される「地球空洞説」をテーマにしているが、その理由を「科学と神話の境界線がまだはっきりしていない時代だったから」としており、絶妙な時代設定といえる。
また、大戦以来島に取り残されたマーロウも、残留日本兵の横井庄一さんや小野田寛郎さんを思わせ、約30年という月日も非現実的ではなく、ここでも時代設定が活きてくる。
数々のオマージュ
歴代のコングシリーズで描かれたヒロインと心を通わせるシーンはもちろん、ベトナム戦争を描いた傑作『地獄の黙示録』、ゴジラ(初代や2014年版通称ギャレゴジ)、宮崎駿作品などあらゆる映画のオマージュシーンが劇中に登場する。
かなり多いので列挙はしないが、元ネタを探しながら観るのも楽しいだろう。
エンドロール後の衝撃
エンドロール後に研究組織モナーク内である映像資料を見せられ、コング以外にも”神々”が存在することが明かされる。
それは壁画だが、明らかにゴジラ・モスラ・キングギドラ・ラドンを模しており、次作への布石としては完璧に近い演出だろう。普段エンドロールを最後まで観ない方も、本作は最後まで見届けてほしい。
5.個人的にマイナスだった点
凡庸な脚本と人物描写
コングはもちろん他のモンスターたちのキャラクターはしっかりと立っているのに反して、登場人物たちが没個性的で魅力を感じられず、”神々”に対して人間はちっぽけな存在と思わせるためにあえて魅力のない人物にしているのではないかと思うほどだ。
また、脚本も面白みに欠ける。
時折、ハリウッド映画特有の真顔で「いま上手い事言いましたよ」のジョークもあるが、それらも上手いとは言い難いものばかりでテンポが悪い場面が目立つ。
海外メディアで「人物がスケッチにのように感じられる」と批評されているのを目にしたがまさにその通りで、「現実的な人物」ではなく「映画的な人物」を描いているため、各々の内面や性格が見えてこず、魅力がなくなっているのではないかと思う。
6.総評
コングやモンスターらの戦闘シーンは迫力満点で圧巻。
展開も従来のコング映画から大きく外れることはなく、正しく王道のモンスター映画といった印象を受けた。
『GODZILLA(2014)』との繋がりを思わせるシーンもあり、「モンスター・ヴァース」シリーズの新たな一歩として重要な作品になったのではないだろうか。
上記の脚本や人物描写の点が大きく足を引っ張っており、「B級モンスター映画の最高峰」の域に収まってしまったのが残念。また、ゴジラとの対決の前にコングの生態を紹介するような展開に終始している印象を受けたが、次作以降どのように展開されるかが楽しみだ。
7.こぼれ話
- 研究組織モナークは『GODZILLA(2014)』でも登場しており、「モンスターバース」シリーズでは肝となる。