ゆうの孤独のシアター

映画レビューを中心に映画関連のブログを書いていきます(当サイトはアフィリエイト広告を利用しています)

『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』前作から4年、さらに進化した映像技術

1993年の大ヒット作「ジュラシック・パーク」の続編。

進化した映像技術が光る『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の解説・考察をしていく。

 

 

 

 

1.作品概要

監督:スティーブン・スピルバーグ

脚本:デヴィッド・コープ

製作:コリン・ウィルソン、ジェラルド・R・モーレン

製作国:アメリカ

配給:ユニバーサル・ピクチャーズ

時間:129分

公開:1997年7月12日

出演:ジェフ・ゴールドブラム、ジュリアン・ムーア、ピート・ポスルスウェイト、アーリス・ハワードほか


2.あらすじ

ジュラシック・パークでの悲劇から4年。イアン・マルコム博士はインジェン社の会長ハモンドに呼び出され、ジュラシック・パークに恐竜を供給するための遺伝子工場「サイトB」がイスラ・ソルナ島にあることを知らされる。閉鎖されたまま放置された島では、恐竜たちが繁殖・野生化しているという。ハモンドから島の調査を依頼されたイアンは危険であることを理由に断ろうとするが、恋人である古生物学者サラが既に現地入りしていることを知り、彼女を助けに行くことに。(映画.comより引用)

 


3.主な受賞・選出

  • 第70回アカデミー賞 視覚効果賞ノミネート
  • 第7回MTVムービーアワード
    アクションシーン賞ノミネート(T-REXのサンディエゴ襲撃シーン)
  • 第18回ゴールデンラズベリー賞
    <ノミネート>
    最低続編賞、最低脚本賞、最低人命軽視と公共物破壊しまくり作品賞


4.作品の見どころ・考察

スピルバーグ監督の続投

スピルバーグ監督は続編の監督をしないことで有名だが、本作は再びメガホンを取っている。

 

前作『ジュラシック・パーク』と同時期に撮影していた『シンドラーのリスト』の撮影が終了後にドリームワークスSKGを設立すし、長期間の休養に入った。復帰作を慎重に検討しているなか、コナンドイルの『失われた世界』と同名の原作に興味を惹かれ、監督をすると決意したという。

 

スピルバーグ監督が続編で再び監督を担当したのは本作と『インディ・ジョーンズ』のみであり、自ずと周囲の期待度も上がっただろう。

 

前作から進化した視覚効果

前作から4年の歳月から経ち、SFXとアニマトロニクスの技術も大幅に向上したことにより、恐竜の種類や画面内の個体の数も多く描けるようになった。個々の生態や集団での行動がより綿密に描かれるようになり、恐竜の存在感が一層増した。

 

また、視覚効果の結果が予測できるようになり、CGでの描写が以前より満足できるものになった事もスピルバーグ監督が続投を決意した理由の1つだろう。

 

卓越した恐怖描写

スピルバーグ監督が一番得意とする恐怖描写も本作でも健在だ。

 

トレーラーが崖から落ちそうになるシーンで特に顕著で、ガラスに徐々に広がるヒビ、ガラス越しのサラの表情、サラたちの吐息やラプトルの鼻息で曇るガラスなど技術の粋が凝縮されている。

 

ほかにも滝つぼに追い込まれた際に、直接は見せずに滝が真っ赤に染まることで惨劇を表現し、踏まれて潰されるのではなく足裏にくっついて何度も叩きつけられるなど冷酷さが特に際立っており監督の真骨頂を味わえる。


5.個人的にマイナスだった点

雑過ぎる人物描写

とにかく登場人物たちの言動が常識から考えられないものばかりで、この点が映画としての完成度を大きく下げている。

 

まずイアンの恋人サラの言動が酷い。
設備や車両の破壊、キャンプを壊滅させる、唯一の良心であるエディの死を招くなど、恐竜以上の厄災として描かれる。

 

それらの行動は不注意や不用意なもの、後先考えないものばかりで必然ともいえる。
映画としてスリリングな局面を演出するためだけの脚色であり、作品のリアリティを大きく欠いてしまっている。

 

イアンの娘ケリーも同様に観客を苛立たせる。
事あるごとに泣き叫び、パニックになっていたため完全なお荷物になっていたが、突如覚醒し、得意な新体操の鉄棒を活かしたアクロバットなアクションでヴェロキラプトルを撃退してしまう。

 

脈力もない演出が続き、何故か黒人という点も不可解で質の悪いコメディを見ているよう。そのほかにも、カメラマンが勝手に卵を持ち出し、捕獲した恐竜を勝手に逃すなど短絡的で身勝手な行動が多く、最低脚本賞にノミネートされたのも頷ける。


6.総評

前作より視覚効果の技術が向上したため画面に大量の恐竜が溢れているさまは、まさにジュラシック・パークだ。それぞれの特徴をより詳細に描写されている点も恩恵を受けている。

 

人間は自然の中では小さく弱い存在であることを、本能で家族を守っている恐竜と対比して描いた演出も、普遍的ではあるが効果的だ。

 

それだけに、理解不能な人物描写に徹した脚色と、前作とは打って変わってかませ犬のような扱いを受けたヴェロキラプトルが残念でならない。


7.こぼれ話

  • 世界第2位の広さを持つユニバーサル第12ステージで撮影していたが、スペースが足りなくなり、最終的に6ステージを埋め尽くす100越えのセットを使用した。