ゆうの孤独のシアター

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『ジュラシック・パークⅢ』原点回帰を目指したシリーズ3作目

シリーズで初めて映画独自のストーリーで挑んだ『ジュラシック・パークⅢ』の解説・考察をしていく。



 

1.作品概要

監督:ジョー・ジョンストン

脚本:ピーター・バックマン、アレクサンダー・ベイン、ジム・テイラー

製作:キャスリーン・ケネディ、ラリー・J・フランコ

製作国:アメリカ

配給:ユニバーサル

時間:94分

公開:2001年7月18日

出演:サム・ニール、トレヴァー・モーガン、ウィリアム・H・メイシー、ティア・レオーニほか


2.あらすじ

古生物学者のアラン・グラント博士は実業家を名乗る男ポールとその妻アマンダから、恐竜が生息するイスラ・ソルナ島を上空から見学するツアーのガイドを依頼される。多額の報酬を積まれ仕方なく引き受けるグラントだったが、ポールたちはグラントとの約束を破って島に着陸してしまう。実はポールとアマンダの真の目的は、8週間前に島の近くでパラセイリング中に消息を絶った息子エリックを捜すことだった。(映画.comより引用)

 


3.主な受賞・選出

  • 第22回ゴールデン・ラズベリー賞
    最低リメイク・続編賞 ノミネート


4.作品の見どころ・考察

原点回帰

原点回帰をテーマに掲げた本作は、モンスターパニック映画に終始した前作とは変わってメッセージ性が強い作風になっている。

 

第1作の主人公アラン(サム・ニール)を再登板させ、インジェン社の悪事を「神の真似事」と痛烈に非難するなど、一貫して描いてきた進歩しすぎたテクノロジーへの警鐘を本作でもしっかりと描いている。

 

大きな変化

作風は原点回帰した一方で、目玉の恐竜はスピノサウルスに変更されている。
前作までT-レックスだったロゴをスピノサウルスに変更し、冒頭で対決するがスピノサウルスが勝利し以降はT-レックスが登場しないなど、その姿勢は徹底している。

 

恐竜ブームの火付け役だったT-レックスだけに頼らずに、新たな恐竜にスポットを当てることで映画と商業の両面で変化をもたらした。

 

声で意思疎通

本作では、「ヴェロキラプトルが声で意思疎通を取っている」という斬新なアイデアがひとつのキーポイントとなっている。

 

中盤でその可能性を示唆され、ラストで唐突にそれが証明される形になり、もう少し展開に絡ませて欲しかったものの、かつてない解釈を採用した点は評価できる。

 

他にも、闇雲に襲っているのではなく卵を取り返すためだったり、待ち伏せしたりなどと頭脳指数が高いことを強調し、真偽のほどは不明だが新たな生態を積極的に取り入れている点も特徴的だ。

5.個人的にマイナスだった点

プロが書いたとは思えない人物描写

前作同様に、人物描写に難点が多すぎる。
恐竜だらけの島で2か月間自給自足のサバイバル生活をしていた少年エリック、勝手に卵を持ち帰り襲われる原因を作ったビリー、元凶のエリックの父ポールと、主要キャストほぼ全員が常識外の言動を取り、リアリティーが皆無になった。

 

特にエリックの母アマンダの言動は目に余るものばかりだ。
恐竜が寄ってくるため大声を禁じられても一切耳を貸さずにヒステリックに叫び続け、事あるごとに身勝手な言動を繰り返し、何度も厄災を招いてしまう。

 

これは前作のサラ同様で、このような人物設定にする必然性が全くなく、観客はただ苛立ちと嫌悪感を覚えてしまう。さらに言えば、スピルバーグが潜在的に持つ女性への意識が現れているように思え、現代では難色を示す人が多いのではないだろうか。

 

アランの描写

インジェン社を強く非難しながら最終的に報酬で再び訪れる導入も疑問が浮かぶが、全体的に納得できないような言動が目立った。

 

中でも、終盤ポールが囮となりクレーンに登った際に閃光弾を投げるが、オイルに引火して大炎上を引き起こしてしまう。結果的にポールは助かるが、アランは他人事のような表情で見つめるシーンはもはやサイコパスとしか思えない。

 

衝撃のラスト

ラストは、島を出て悠々と空を飛ぶプテラノドンら翼竜を救助ヘリの中から微笑んで見守るが、これ以上の被害が出ることや生態系が破壊されることを一切考えていない呑気な様子に衝撃を受けてしまった。

 

映画的なことを考慮すると次作以降のことを想定してのエンディングだが、あまりにも都合主義的で安直な演出で最後まで嫌気が差してしまう。登場人物らの知能ではそのような思考に至らないという痛烈な皮肉ならかなり面白いが。


6.総評

原作ではなく映画独自のストーリーであったり、新たな試みを取り入れたりと意欲的ではあるが、傑作の1作目、娯楽作に振り切った2作目と比較するとどちらとも取れない中途半端な作品になってしまった。

 

作品としてはそこまで目新しさはないが、スピルバーグの女性観が如実に表れており、どこかヒッチコック監督のそれと通ずるものがあるように思え、その点は大きな収穫だった。

7.こぼれ話