ゆうの孤独のシアター

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『プルーフ・オブ・ライフ』新時代のK&Rビジネスに目を向けたサスペンス

麻薬の次に市場規模の大きいとされる身代金目的の誘拐に着目した『プルーフ・オブ・ライフ』の解説・考察をしていく。

 

 

 

1.作品概要

監督:テイラー・ハックフォード

脚本:トニー・ギルロイ

製作:テイラー・ハックフォード、チャールズ・マルヴェヒル

製作国:アメリカ

配給:ワーナー・ブラザーズ

時間:135分

公開:2000年12月8日

出演:ラッセル・クロウ、メグ・ライアン、デヴィッド・モース、パメラ・リード、デヴィッド・カルーソほか


2.あらすじ

国際的な人質事件を専門に扱うプロの交渉人テリーは、会社の要請で南米の国テカラへ飛び、反政府ゲリラに誘拐されたアメリカ人技師ピーターに関する事件を扱うことになる。だが身代金の交渉を進める前に、経営危機に陥ったピーターの会社が保険をキャンセルしていたことが発覚。テリーはいったん事件を離れるが、ピーターの妻アリスの哀願に心を動かされ、交渉人仲間のディーノと共にピーターを救い出すと誓う。(映画.comより引用)

 

3.主な受賞・選出


4.作品の見どころ・考察

誘拐身代金保険

本作はK&R(誘拐身代金保険)が鍵となる。日本では聞き馴染みがないが、そのような保険が存在し、海外では一般的に普及していることに驚いた。

 

裏ビジネスで麻薬の次に市場規模が大きく、身代金目的の誘拐が世界各地で多発しているという事実も衝撃的で、世界的な問題に目を向けることができた。

 

魅力的な主演二人

交渉人テリー役のラッセル・クロウは渋みのある表情や声、筋肉質な肉体など画面映えし、誘拐されたピーターの妻アリス役のメグ・ライアンもパーマがかったブロンドのショートヘアがよく似合い、表情や目線が非常にコケティッシュだ。

 

全盛期の二人が並ぶとまさにハリウッドの華やかさを体現しているかのようだが、本作を機に実生活でも不倫してしまったのは残念だ。

 

クロウは激太りや私生活での素行の悪さからコメディや汚れ役ばかり、ライアンも出演作が連続で不入り、整形失敗など、本作の不倫を境に二人ともキャリアを大きく失速させてしまったのは勿体ない。

 

5.個人的にマイナスだった点

全てが凡庸

誘拐、長引く交渉、持久戦になり精神的に消耗していく妻や義姉、決死の救出など既視感のあるものばかりでオリジナリティを感じられなかった。

 

冗長な場面が多く、起伏も乏しいためテンポが悪く上映時間以上の長さを感じてしまうのは気になった。

 

二人の関係

テリーとアリスは長引く交渉の中で互いに惹かれあい、救出直前についにキスまでしてしまうが、はっきり言ってこのロマンス要素は全く不要だ。

 

彼は優秀なエージェントで非常にプロ意識の高い人物として描かれているため、依頼主の人妻に手を出すことは有り得ないだろう。またアリスも、いくら直前で喧嘩をして険悪になっていたとは言え、生死の境にいて厳しい状況にいる夫を差し置いて数ヶ月一緒にいる男に恋愛感情を抱くのも現実的ではない。

 

また、救出されたピーターが二人のやり取りを見て、おそらく関係性を察したような目線を送るが、こちらも不要。

 

娯楽映画としてのワンクッションを入れたかったのと、『007』のような作風にしたかったのではないかと推測できるが完全に作品の方向性を見失っている。

 

武力行使

最終的にテリーが数人の仲間を連れて武力行使で救出を作戦・実行するのだが、あくまで交渉人なので交渉や策略で救出してほしかった。

 

これでは元より交渉などせずにシュワちゃんよろしく、武力行使で映画が完結してしまう。せっかく誘拐保険や交渉人というテーマにしているなら、最後までその設定を活かしてほしい。


6.総評

9.11前の2000年の作品だが、国家の安全が揺らぎ不安定な情勢になることを予見したような先見性や多発する身代金目的の誘拐や企業の誘拐保険などを取り扱ったプロットは目新しく、脚色次第では傑作になり得ただろう作品。


7.こぼれ話

  • 本作を機にクロウとライアンは実生活でも不倫関係になり、ライアンはデニス・クエイドと離婚した。だが、同時期にクロウとの関係も解消している。