ゆうの孤独のシアター

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『バッド・ボーイズ』卓越した映像表現の数々!マイケル・ベイ監督の映画デビュー作

マイケル・ベイ監督の映画デビュー作。
興行収入1.4億ドルという大ヒットにより一躍人気監督の仲間入りを果たした『バッド・ボーイズ』の解説・考察をしていく。

 

 



 

 

1.作品概要

監督:マイケル・ベイ

脚本:マイケル・ベリー、ジム・マルホランド、ダグ・リチャードソン

製作:ドン・シンプソン、ジェリー・ブラッカイマー

製作国:アメリカ

配給:コロンビア・ピクチャーズ

時間:118分

公開:1995年4月7日

出演:マーティン・ローレンス、ウィル・スミス、ティア・レオーニ、チェッキー・カリョほか


2.あらすじ

マイアミ市警の奥深くに保管されていた1億ドル相当の押収ヘロインが、ある夜、何者かに盗まれた。外部に漏れる前=72時間以内の解決が至上命題となり、麻薬特捜班のハワード警部は、その任をマーカスとマイクの両刑事に命じた。(映画.comより引用)

 


3.主な受賞・選出

  • 第5回MTVムービーアワード
    <ノミネート>
    アクションシーン賞(格納庫で銃撃戦)
    コンビ賞


4.作品の見どころ・考察

CMディレクターとしての経験

本作は全編通してマイケル・ベイ監督のスタイリッシュな映像表現を存分に味わえる。

 

ミュージックビデオやCMディレクターとして活躍していたため、少ない秒数でインパクトを残す手法に長けており、そのことが印象的なアクションシーンを生み出していると見て取れた。

 

また、車のCMも多く手掛けていたことから車の魅せ方も抜群だ。
後にスピルバーグ監督が「車をカッコよく撮らせたら彼の右に出るものはいない」と絶賛したほどのカーアクションは本作ですでに完成されつつあり、カーアクションの醍醐味を堪能できる点も注目だ。

 

マイケル・ベイ節

後にマイケル・ベイ監督の代名詞としてほぼ毎作で見られるようになる
「カメラを螺旋状に旋回しながら上昇する撮影」は本作でも見られ、アクション映画界を牽引していく存在であることを予感させる。

 

さらに、高速なカット割り、あえて車体を揺らしてブレを生み臨場感を演出、ローポジションで並走するカーアクション、ド派手な銃撃戦、大量の火薬による大爆発、夕日をバックにしたショット、大音量の音楽など随所で”マイケル・ベイ節”を味わうことができる。

 

独特な色使い

舞台となったマイアミの夕陽をイメージしたかのようなセピア調の画面や、白や青などの色味が強いシーン、原色に近いようなカラフルなシーンなど、色彩感覚が非常に優れている印象を受けた。

 

特に、セピア調の画面や夕日を背景に疾走する車などはその後の90年代後半から2000年代後半頃のアクション映画では数えきれないほど見た光景で、本作の影響力を窺い知ることができ、90年代アクション映画の1つのターニングポイントではないかと思う。


5.個人的にマイナスだった点

笑えない脚本

コメディの側面も持つ本作は2人のマシンガントークが特徴だが、個人的には面白い・秀逸と思えるセリフがほとんどなく、ただただ苦痛だった。

 

いかにもな紋切り型のセリフ回しと、アメリカンコメディにありがちな「いま面白いこと言いました」「座布団貰える上手いこと言いました」「ここが笑いどころですよ」の顔芸や演出が鼻につき、時間が経つにつれて次第に苛立ってしまう。

 

もちろん好きな方、楽しめる方も多いと思うが、文化や感性の違いから、日本人では拒絶反応を示す方も多いのは事実だろう。

 

強引すぎる設定

重要参考人のジュリーがマーティンのことをマイクと勘違いしたことから、2人が入れ替わってお互いを演じるという設定は不要で、ただ映画のテンポを落としている。

 

事情を説明し、警察の保護下に置いて2人で捜査をしたほうが圧倒的に安全なためあえてリスクを冒す必要はない。この設定は、マーティンの不倫疑惑ドタバタコメディを成立させるためだけの設定でしかなく、強引さだけが悪目立ちしている。

 

その不倫疑惑ドタバタコメディが面白いならまだ良いが、全く笑える場面がなく、観ているこちらが恥ずかしさを覚えるほどだ。

 

理解に苦しむ行動の数々

登場するほとんどの人物が無計画で突飛な行動を繰り返すため、作品をより荒唐無稽にしてしまっている。

 

署での保護・聴取を拒否し捜査を難航させた挙句、勝手にクラブに乗り込んで発砲する、所かまわず発砲・カーチェイスを行う敵組織、最終盤でジェリーを拉致して脅迫電話をかける組織のボスなど人間が描けていない点が致命的。

 

ほかにも、意味ありげだが本筋に関係ない内部調査班、無能な上司が突如クビをかけて応援を要請するなど脈略のないものが多く、これらの滑稽さがある種の笑いを生んでいるのは何とも皮肉だ。

 

スローモーションの多用

本作ではかなりの高頻度でスローモーションが使用されているが、結果的にそれらがテンポや緊迫感を削いでしまっていて勿体ない。

 

特に、ジュリーを巡る攻防の際にスローモーションを使用したのは完全に誤りだ。
劇中で最もスローモーションを使用してはいけない場面なだけに、なぜここで使用したのか分からない。

 

6.総評

卓越した映像センスと派手なアクションなどは監督デビュー作とは思えないほどの完成度で、ヒットメイカーとして名を上げていったのが分かる。

 

勢いを重視した作品のためとやかく言うのは分かってはいるものの、やはり目に余る部分が多いのは気になる。細かいことを気にせずに派手なアクション楽しむ典型的なポップコーンムービーだが、観る人を選ぶのも事実だ。

 

作品を重ねるごとに派手になり、さらにスケールを増していくマイケル・ベイ作品の中では比較的抑え目な作品なだけに、次回作以降の移り変わりを楽しむのも楽しいだろう。

 


7.こぼれ話

  • ベイ監督、シンプソン、ブラッカイマーはその後シンプソンが亡くなるまでの12年間トリオで作品を作り続けた。
  • 製作費が足りなかったために、自腹で小切手を切りドル紙幣を用意した。