ゆうの孤独のシアター

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『ブルゴーニュで会いましょう』自然豊かな大地でワイナリーと親子関係の再建を目指す

フランス・ブルゴーニュ地方を舞台に、老舗ワイナリーを営む家族の再生を描いたヒューマンドラマ。

ワイナリーと親子の再生を描いた『ブルゴーニュで会いましょう』の解説・考察をしていく。

 

 

 

 

 

1.作品概要

監督:ジェローム・ル・メール

脚本:ジェローム・ル・メール

製作:アラン・テルジアン

製作国:フランス

配給:クロックワークス

時間:97分

公開:2016年11月19日

出演:ジャリル・レスペール、ジェラール・ランヴァン、アリス・タグリオーニ、ローラ・スメットほか


2.あらすじ

20歳でブルゴーニュを離れたシャルリは、パリで著名なワイン評論家として活躍していた。そんな彼のもとに実家のワイナリーが倒産の危機の報せが入り、シャルリは実家へと戻る。久しぶりに父親との再会を果たすシャルリだったが、父はワイナリーを捨てて出ていった息子を許すことができなかった。(映画.comより引用)

3.主な受賞・選出

 


4.作品の見どころ・考察

美しい風景

一面に広がるぶどう畑、差し込む太陽の光、ブルゴーニュ地方のシンボルであるクロ・ド・ヴージョ城やピエールクロ城など広大な大地を余すことなく映した映像が素晴らしい。

 

また、主人公シャルリは180平米もある室内プール付きの高級マンションに住んでいるため、自然豊かなブルゴーニュと寒々しい大都会パリが見事に対比になっており、父と子の思考をも反映しているようで面白い。

 

ブルゴーニュ産ワインの難しさ

同じくワインの名産地のボルドーが大規模経営なのに対し、ブルゴーニュでは家族経営が伝統的な手法とされているため、財政難や後継者不足など多くの問題を抱えているとされている。

 

それらの問題点に親子間の関係修復の再建を重ね合わせるというプロットはスマートで、着眼点が光る一作だ。

 

”新しい”手法

固定観念を捨てられず頑固な性格の父と、都会で成功を収めている新進気鋭の息子。


通常、このような設定では、最新の科学技術やデータを駆使して従来では想像できないような手法を提案し父親を説得する場合が多いが、本作で息子シャルリが提案したのは「古代ローマで用いられた古典的な手法」だった。

 

今では誰も行っていない非効率的な手法であえて挑戦するという展開は観客の意表を突くもので、監督の独創性を感じられた。


5.個人的にマイナスだった点

雑な人物描写

新しい手法自体は面白いが、その手法を採用した意図や算段が明かされず、成功する見込みが全くないにも関わらず、あれほど頑固だった父親があっさりと受け入れることに違和感を覚えた。

 

シャルリの幼馴染ブランシェは婚約相手がいるがシャルリと三角関係になり、彼女の行動が不快感を抱かせるものばかりで、作品の質を大きく低下させている。例をあげると、至る所で行われるキス、醸造所でのセックス、収穫時期や栽培方法の過剰なアドバイスなど方向性を揺るがす演出が多く、親子の再建物語に不要なものばかりだ。

 

また、婚約相手がオレゴン州で大規模なワイナリーを経営していることからブランシェの母親も彼を敬遠しており、最終的に一人で帰国するなど落ち度が全くないにも関わらずそのような仕打ちを受けるのは不憫でならない。

 

このように人物描写ができていないため、どの人物にも感情移入できないのが最大の欠点であり、ヒューマンドラマとしては致命傷ともいえる。


6.総評

着眼点の良さや映像の美しさが際立っているだけに、人物描写が雑だったのはもったいない。ブランシェのおかげで収穫が成功し、シャルリ自身はほとんど活躍しないため、素人の突飛なアイデアが偶然成功したという印象は否めない。

 

監督は本作が長編2作目ということなので、随所で見られた独創性が次作以降でも発揮されることを期待したい。


7.こぼれ話