ゆうの孤独のシアター

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『300<スリーハンドレッド>』300対100万!死を覚悟で戦いに挑む漢たち

フランク・ミラー原作のグラフィックノベル『300』を元に、ペルシア戦争のテルモピュライの戦いを描いた。ほぼ全編でCGが使用されていることが特徴。

熱い漢たちの『300<スリーハンドレッド>』の解説・考察をしていく。

 

 

 

 

1.作品概要

監督:ザック・スナイダー

脚本:ザック・スナイダー、マイケル・E・ゴードン、カート・ジョンスタッド

製作:フランク・ミラー、デボラ・スナイダーほか

製作国:アメリカ

配給:ワーナー・ブラザーズ

時間:117分

公開:2007年3月9日

出演:ジェラルド・バトラー、レナ・ヘディ、ドミニク・ウェスト、ロドリゴ・サントスほか


2.あらすじ

紀元前480年。スパルタ王レオニダスのもとに、侵略を目論むペルシア帝国の王クセルクセスから使者が来訪し、水と土地を差しだし、服従の証を示せと要求。レオニダスはこれを拒否し、たった300人の重装歩兵で100万のペルシア軍を迎え撃つことになる。(映画.comより引用)

 


3.主な受賞・選出

  • MTVムービー・アワードファイト賞
  • 第34回サターン賞 監督賞

など


4.作品の見どころ・考察

ほぼ全編CGによる映像

本作はほぼすべてのシーンでCGが使用されており、劇中の風景、戦闘、アクション、建築物もCG処理されており屋外での撮影はワンシーンのみという徹底ぶり。

 

炎の燃え方、傷口、武器、CGの血と現実の血の比較など、普通は気にも留めないような細部に至るまで、とにかく全てを何か月もかけてデジタル処理を施したといい、原作の世界観や監督・原作者のイメージを再現できている。

 

スナイダー監督が「ブルー・スクリーンの革命期が来たことが大きかった」と語っているように、CGによる効果処理が一般的になってきた2000年代中盤だったからこそ完成した作品ともいえる。

 

”クラッシュ”した映像

理想の映像に近づけるため、色彩のバランスを操作したことを後に”クラッシュ”としている。

 

黒い部分を弱め、彩度を高めることで色のコントラスト比を変える方法を用いて、荘厳ではあるがどこか感傷的な独特な映像と雰囲気を構築することに成功している。

 

負けることで勝つ

テルモピュライの戦いとは、紀元前480年8月に南下を進めるペルシア遠征軍とスパルタを中心とするギリシア連合軍の間で行われた戦闘で、300対100万という圧倒的な数的不利のなか、テルモピュライの狭い山道で迎え撃ち、3日間にわたって侵攻を阻止し、ペルシア軍に甚大な被害を与えたとされている。

 

史上最も熾烈な戦いのひとつとされているこの戦いでギリシア軍は死を覚悟の上で戦闘に挑んだが、彼らの戦いと死が残りのギリシア軍の士気を上げ、活力を与えた。これは、戦場での死は名誉あるものという戦闘民族のスパルタの考えがあったからこそ成立したものだ。

 

死を覚悟で進軍し、一糸乱れぬファランクスでは仲間のために盾を構える彼らの雄姿に思わず胸が熱くなる。

 

武士道との類似点

原作者のミラーは『子連れ狼』から

「厳しい流儀が言動にも反映され、精神的な面と日本独自の文化、そして戦いが三位一体となったもの」

と武士道を解釈したという。

本作でもその影響は随所でみられ、スパルタの中にも日本の侍の姿を感じることができた。


5.個人的にマイナスだった点

スローモーションやファストモーションの多用

戦闘中や殺陣のアクションで多用され、クリエイティブな映像に仕上がっている反面、迫力を欠いてしまっている。これらは、劇中でここぞの場面で使用されるため効果を生むと思うが、あまりに多用され過ぎてテンポも非常に悪くなっている。

 

全体的にゲームやミュージックビデオなどのビジュアル先行のアクションとなっており、これは好みがかなり分かれるだろう。

 

中途半端なファンタジー要素

本作はかなりリアリティを求めたと聞くが、ファンタジー要素がかなり強い。

 

例として、半人半豚のような司祭、3メートルはありそうな怪力男、仮面をつけた忍者のような不死集団、巨大なゾウやサイ、両腕がギロチンになっている執行人など数多い。

 

これらもまたゲームのような印象を与える一因で、史実要素かファンタジー要素かどちらかに振り切ってほしい。鍛え上げられた鎧のような肉体と、絶対に退却・降伏しない不屈の闘志を前面に出した武骨な演出を期待したため肩透かしを食らってしまった。


6.総評

両軍、特にペルシア軍の大群や圧巻の戦闘などを映像化できたのは映像技術の進歩によるものだがCGに頼り過ぎている部分は否めない。また、映像自体は素晴らしいが印象的なシーンや殺陣が少ないため、鑑賞後に大雑把な記憶になってしまうのも瑕か。

 

とにかくビジュアルのカッコよさにこだわった作品のため、そういった作品が好きな方や虚実入り混じった破天荒な作品が好きな方にはおススメできる。


7.こぼれ話

  • 俳優たちはビルダー顔負けの肉体をしているが、そこはCGではなく実際にワークアウトして撮影に臨んだとのこと。
  • 原作では王妃の出番は冒頭だけだが、映画では大幅に出番を増やした。
  • スパルタ人の格好は当然だが歴史的に正しくはなく本来は甲冑のようなものを着ていたという。だがミラーは「スパルタ人のイメージじゃない」として本作の格好に決定した。