人気キャラクター「すみっコぐらし」を原作とした劇場版の第1作である『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』の解説・考察をしていく。
1.作品概要
監督:まんきゅう
脚本:角田貴志
製作:日本すみっコぐらし協会 映画部
製作国:日本
配給:アスミック・エース
時間:66分
公開:2019年11月8日
出演:井ノ原快彦、本上まなみ(共にナレーション)
2.あらすじ
ある日の午後、お気に入りの喫茶店「喫茶すみっコ」を訪れたすみっコたちが注文した料理を待っていると、地下室から謎の物音が聞こえてくる。音の正体を確かめに行ったすみっコたちは、そこで1冊の飛び出す絵本を発見する。(映画.comより引用)
3.主な受賞・選出
- 第29回日本映画批評家大賞 アニメーション作品賞
4.作品の見どころ・考察
すみっコたちの説明
本作は劇場版第1作ということで、すみっコたちのキャラクターが簡単に説明される。
コンテンツとしてのすみっコぐらしというキャラクターは当然知っていたが、名前や個々の性格などは詳細に知らなかったため、はじめて触れる観客にも作品に入りやすい配慮がされている。
すみっコたちの成長
すみっコたちは「桃太郎」や「アラジン」、「赤ずきん」など誰でも知ってる物語を下敷きに次々と旅をすることになり、道中で「ひよこ」と出会う。
ひよこは自分が誰だか分からず、家への帰り方も分からないがすみっコたちと旅を続ける中で、アイデンティティーや居場所を求めるようになる。そんなひよこに、すみっコたちは時に励まし、時にはそっと寄り添いながらひよこの冒険をサポートする。
この姿は、社会や日々の生活に疲労感や孤独感を感じてたことのある方なら心にしみるような演出だ。
ひよこの決断
ラスト、ひよこはある決断をしなければならないが、その決断に「そうだね、もう一人じゃないもんね」と思わず涙がこぼれた。
本作は「大人も泣ける」と謳っているが、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オトナ帝国の逆襲』と同様に、様々な経験をした「大人こそ泣ける」作品なのではないかと思わされる。
5.個人的にマイナスだった点
ナレーション
本作では「イメージが損なわれたり、違和感を覚えてほしくないため声をあてないでほしい」という原作者の強い想いがあったため、吹き出しや文字で表現される。
それ以外をナレーションで補完するスタイルなのだが、このナレーションが本職ではない俳優2人が担当しているため、お世辞にも上手いとは言い難い。
2人のネームバリューは強いが、ナレーターや声優など声を生業としている方に担当してもらいたかった。
6.総評
低年齢層をターゲットにしているため間延びしたり展開が唐突だったりと欠点もあるが、彼らの愛らしさにそれらも微笑ましく思える。
口コミで評判が広まり連日大人が劇場に足を運ぶなど、制作陣の予想以上のヒットとなったらしいが、仕事終わりにすみっコたちに癒しを求めるのも納得だ。
時間も1時間ほどで、疲れた日や寝る前に観るにも程よい長さで、多くの”すみっコ”たちの心の支えになりそうな作品だ。
7.こぼれ話
- たれぱんだ、アフロ犬、リラックマなど数々のキャラクターを世に送り出してきたサンエックス株式会社の初めてのアニメ映画。